戦う司書と絶望の魔王
まず、自分の読解力と文章力ではこの作品の感想を書くのが難しい。それほどこの作品は良質で、重厚なファンタジー小説である。
このシリーズでは今まで、「愛」を一貫したテーマだと感じてきた。そして、それらを伏線として、この最後の舞台である「絶望」との戦いがが描かれている。
まさかのウィンケニー登場にいきなり鳥肌が立ってしまった。ネタ的な人物として持ち上げられることもあるが、そのひたむきな姿勢が好きだった。そして、モッカニアを理解した彼でさえ、ルルタの絶望を知って、世界を滅ぼす以外に方法がないと感じてしまう。
話はルルタの過去、ハミュッツや菫の咎人チャコリー生誕の秘密へと移る。チャコリーは、想像とかなり違ってすこし驚いた。前の巻ではすごく可愛いイメージだったのだが……。
そして、最後の来訪者として、ルルタを訪れる人物に、衝撃と、感動。純粋な愛を持っているというだけでハミュッツやルルタに影響を与えてるというのはすごいと思う。そして、原点に戻った、また全ての話が繋がっているんだという感覚に、やっぱり鳥肌。
見事に伏線を回収し、話が一つの線となっていく様は素晴らしかった。次回が最終巻。どのような形でこの「本」を締めくくるのか見届けたいと思います。
いや、しかし。誤読とか読み落としないか心配……。
「殴打、ありがとうございました!」
きっと、これにも深い意味が込められてるはず。
円環少女(9)公館陥落
まず、本編に関係ないが、「鬼神繚乱」の帯がすごくかっこいい。 最近の帯は本文の引用が多いが、単純でわかりやすく、読み手を熱くさせる帯がとても良かった。
このシリーズの特徴は「変化する物語」だと思う。主人公の立ち位置が常に変化し、後に戻れない展開の連続。そしてこの巻もあとがきにある通りブレーキをかけずに突っ走っていた。
僕はこういう変化する、次の展開を想像出来ないような物語がとても好きだ。たぶん、仁が公館を離れた辺りから、僕のこのシリーズに対する情熱は本物になったと思う。
今回は物語の転換点であったと思う。公館の旧体制から、京香が模索する新しい公館のあり方へ。
鬼火の反乱とも思える行動は、組織を脱皮させる上で必要な、儀式のようなものであったのかもしれない。
鬼火東郷。彼は公館の精神的支柱であるだけでなく、一時代の象徴であった。そして彼は少しずつ変化していく公館内部のことは口にしない。そして同時に自分のやり方が新しい組織とは相容れないこともわかっていた。その上で神聖騎士団という脅威と重なって、あのような行動を取って自身に幕を引いたのである。これが単純に組織を離れただけでは、公館内部でも分裂が起こったのかもしれない。
そして、この巻を語る上で外せないのが、国木田である。彼は何かを変えようとして、結局、時代に取り残されてしまった。対照的な二人の生き方は今の団塊世代に何か語りかけるものがあるなあと思った。
とまあ組織のことは置いといて。相変わらずバトルも日常パートも熱いです。卑怯だとか悪だとか偽善だとか自覚しちゃう仁は、なんかもう、好きになれます。何だかんだ軸がぶれまくりで、流されまくってる仁ですが、本当に大切な何かだけは曲げないとこがいいですよね。メイゼルに対して「子どもだから」という言い訳は段々通用しなくなってる気がします。ところでこれは全く関係ないですが、物語だけでなく、メイゼルに対してもブレーキをかけなくてもいいんデスヨ。そして相変わらずベルニッチ株は上がりまくり。茨姫の変態度合いも上がりまくり。八咬株も上がりまくり。
とにかく。
読者はもうシートベルトをかけてます。行き着く先がどこであろうとみんな、心中できる。
久々の更新は愚痴と上半期を振り返ってみる
最近めっちゃ面白いって言える新シリーズがないよ!
というかあんま新規に手を出していないんだけどね!
というわけで?久しく更新をしてなかったのですが、ラノベやらその他の本を読んでなかったわけではありません。更新をサボってたのです。
なので、今回のラノサイ杯は投票できなかったけど、上半期、既存シリーズで面白かったのはやはり「戦う司書」「円環少女」「とらドラ」「〈本の姫〉は謳う」辺りかなーと。
ちょっとマイナーで完結しちゃったんだけど「バトルフィールドは空騒ぎ!」も個人的にはお気に入りでした。
というか、毎回同じシリーズ挙げてるし、上半期って括りは意味ないかもね!
新規の作品で、自信持って面白かったっていえるのは「とある飛空士への追憶」と、秋山瑞人の新作「DRAGONBUSTER」ぐらいかな。新人だと「とある〜」だけになっちゃうし*1、上半期は「すんげえ!」って思える新規の作品は、少なかったかも。
ということで、これからはなるべく感想などを書いていこうと思います。アウトプットして初めてわかることもあるしね。
*1:調べたらこの人も結構前にデビューしてて新人ではないから、今期はやっぱすばらしい力量を持った新人さんには出会えなかったですねー。