戦う司書と絶望の魔王


戦う司書と絶望の魔王 (スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と絶望の魔王 (スーパーダッシュ文庫)

 天国がルルタの「本食い」の能力である仮想臓腑であると判明し、ルルタが幸福の本を集めるのはルルタ自身の願いを叶えるためであった。ハミュッツは死亡、武装司書も全滅し、世界は破滅へと向かいつつあった。かつて世界の救世主であったルルタが果てしない絶望に至った過去、そしてこの世界の歴史、ハミュッツ生誕の秘密、全てが明らかになる。


 まず、自分の読解力と文章力ではこの作品の感想を書くのが難しい。それほどこの作品は良質で、重厚なファンタジー小説である。
 このシリーズでは今まで、「愛」を一貫したテーマだと感じてきた。そして、それらを伏線として、この最後の舞台である「絶望」との戦いがが描かれている。
 まさかのウィンケニー登場にいきなり鳥肌が立ってしまった。ネタ的な人物として持ち上げられることもあるが、そのひたむきな姿勢が好きだった。そして、モッカニアを理解した彼でさえ、ルルタの絶望を知って、世界を滅ぼす以外に方法がないと感じてしまう。
 話はルルタの過去、ハミュッツや菫の咎人チャコリー生誕の秘密へと移る。チャコリーは、想像とかなり違ってすこし驚いた。前の巻ではすごく可愛いイメージだったのだが……。
 そして、最後の来訪者として、ルルタを訪れる人物に、衝撃と、感動。純粋な愛を持っているというだけでハミュッツやルルタに影響を与えてるというのはすごいと思う。そして、原点に戻った、また全ての話が繋がっているんだという感覚に、やっぱり鳥肌。
 見事に伏線を回収し、話が一つの線となっていく様は素晴らしかった。次回が最終巻。どのような形でこの「本」を締めくくるのか見届けたいと思います。
 いや、しかし。誤読とか読み落としないか心配……。
 「殴打、ありがとうございました!」
 きっと、これにも深い意味が込められてるはず。