円環少女(9)公館陥落


燃え落ちる公館に火を放ったのは鬼火東郷だった。十崎京香は仁に鬼火討伐の依頼を託す。協会との連絡が途絶え、迫り来る神聖騎士団の総攻撃。鬼火は配下の刻印魔導師たちを連れて地下へ向かう。全てが交錯する場所に仁とメイゼルも向かった。


まず、本編に関係ないが、「鬼神繚乱」の帯がすごくかっこいい。 最近の帯は本文の引用が多いが、単純でわかりやすく、読み手を熱くさせる帯がとても良かった。


このシリーズの特徴は「変化する物語」だと思う。主人公の立ち位置が常に変化し、後に戻れない展開の連続。そしてこの巻もあとがきにある通りブレーキをかけずに突っ走っていた。
僕はこういう変化する、次の展開を想像出来ないような物語がとても好きだ。たぶん、仁が公館を離れた辺りから、僕のこのシリーズに対する情熱は本物になったと思う。
今回は物語の転換点であったと思う。公館の旧体制から、京香が模索する新しい公館のあり方へ。
鬼火の反乱とも思える行動は、組織を脱皮させる上で必要な、儀式のようなものであったのかもしれない。
鬼火東郷。彼は公館の精神的支柱であるだけでなく、一時代の象徴であった。そして彼は少しずつ変化していく公館内部のことは口にしない。そして同時に自分のやり方が新しい組織とは相容れないこともわかっていた。その上で神聖騎士団という脅威と重なって、あのような行動を取って自身に幕を引いたのである。これが単純に組織を離れただけでは、公館内部でも分裂が起こったのかもしれない。
そして、この巻を語る上で外せないのが、国木田である。彼は何かを変えようとして、結局、時代に取り残されてしまった。対照的な二人の生き方は今の団塊世代に何か語りかけるものがあるなあと思った。


とまあ組織のことは置いといて。相変わらずバトルも日常パートも熱いです。卑怯だとか悪だとか偽善だとか自覚しちゃう仁は、なんかもう、好きになれます。何だかんだ軸がぶれまくりで、流されまくってる仁ですが、本当に大切な何かだけは曲げないとこがいいですよね。メイゼルに対して「子どもだから」という言い訳は段々通用しなくなってる気がします。ところでこれは全く関係ないですが、物語だけでなく、メイゼルに対してもブレーキをかけなくてもいいんデスヨ。そして相変わらずベルニッチ株は上がりまくり。茨姫の変態度合いも上がりまくり。八咬株も上がりまくり。
とにかく。
読者はもうシートベルトをかけてます。行き着く先がどこであろうとみんな、心中できる。