円環少女(6)太陽がくだけるとき


もうすごいとしか言いようがない。
今年一番のライトノベルは何かを決めることがあるならば、必ずその争いに食い込むと思う。

テロリストによって瀕死の状態となったメイゼルを救うために仁は地下都市へ向かった。それは《公館》に反旗を翻すことを意味していた。これまで専任係官として戦ってきた茨姫が、そして師匠である鬼火が、敵となって彼の前に姿を現す。仁は彼らとの戦いを乗り越えて、メイゼルを救うことができるのか。核爆弾という未曾有の脅威が東京に迫る中、仁の死闘が幕を開ける。

予想を上回る幕引きからの最新刊にして東京地下戦争、完結編。仁vs鬼火、あるいは茨姫ということを知って読む前から興奮していました。ただ、仁・メイゼルのSMプレイは今回ほとんどありません。それは予想をしていたし、本編を読めばそんな場面が浮くだけだとわかるくらい、もう緊張感にあふれたクライマックスの連続。もちろん要所要所ではニヤリとさせられました。裸の子供を見て、錬金体系だとわかった場面では地味に笑ってしまいました。
話は国木田の原風景から始まります。「犠牲の上に成り立つ秩序」が許せなかった。曖昧な悪が許せなかった。国木田を動かす原動力はそのあたりでしょうか。しかし、国木田の話は多少軸がぶれている感じもあってあまり魅力的なキャラクターとして見ることができなかったです。それが唯一残念な所でした。そして話は仁の過去にも及びます。仁がメイゼルに舞花を重ねているといっては失礼ですが、とにかく仁がすべてを捨ててまで守りたいという行動の基盤が垣間見えます。
そして、本当にすべてを捨ててまで選んだ仁の道は専任係官に追われ、地下都市殲滅を目指し、核を奪取するというまさに辛く険しい修羅の道でした。いきなりの鬼火との戦闘や茨姫との戦いは壮絶を極めていました。ただ、すべてを捨てた仁ではありますが、それでもきずながいて、神和がいて八咬がいて、あるいはエレオノールがいて、さらには地下都市の子どもたちもいる。そんな展開はどこか心に響きます。そして、その修羅の道を歩む過程での彼女との出会い。その場面では仁さながらに、本当に目頭が熱くなってしました。ただ、その分だけ胸を締め付けられたのもまた確かです。彼女との関係は刻々と変化しています。本当は愛しくて恋しいはずなのに、この辺はもうツンデレなんて言葉では片付けられないものがありました。
王子護はまさに中世の森深い場所に住む魔女の様な「悪い魔法使い」を体現していましたね。そして彼と仁との戦いは、今回史実を絡めた話だからこその結末、決着であり、皮肉なものでした。また隠れたラストシーンである寒川淳の台詞の連呼は読んでいるこっちも恥ずかしくなりましたが、それでも馬鹿にできない言葉の力がありました。
他にも不死の精霊騎士や国木田といった強敵との戦いや、ベルニッチ株急上昇!?な出来事が起きたりと、もう満腹でお腹がはち切れんばかりの内容でした。またグレンの意志がまだ生きていることにもドキリとしました。
正直、グレン編を超えるようなダイナミックな話はないかと思っていただけに、この東京地下戦争編、ただただ感服せざるをえません。
これからどうなるのか。話をどうやって展開するのか。いよいよ過去の話になるんだろうか。本当に予想がつきません。ただ、きずなの見た未来は崩れ、最後の場面での天瑞岬の台詞は、仁にとって笑えない冗談であり、また先行きを暗示しているのかもしれません。

勢いで書いたために思わずと取り留めのない長めの感想となってしまいました。とにかく本当に面白かった!おすすめ!