鉄球姫エミリー


鉄球姫エミリー (鉄球姫エミリーシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

鉄球姫エミリー (鉄球姫エミリーシリーズ) (スーパーダッシュ文庫)

いやあこんなお話だとは思いもしなかった!面白かったです。

王女ながらも、輝鉄と呼ばれる鉱石により爆発的に身体能力を向上させる鎧、大甲冑を纏い、鉄球を振り回す少女エミリー。弟王との玉座を巡る争いを避け、辺境に身を置くエミリーになおも陰謀の手は迫る! 黒い大甲冑に身を包んだ暗殺者、亡霊騎士の襲撃が屋敷を襲う。エミリーを護るために命さえも懸ける護衛騎士、装甲侍女たち。美しき王女を巡る死闘の行方は…!?(公式サイトより)

どうでもいいかもしれませが「てっきゅうき」と読みます。
下ネタがひどいと選考委員の選評にあった気がしましたが、たしかにひどい(笑)いきなり粗チン呼ばわりですか。でも終わった後にはそれもアリだったと思えるし、こんな内容だと、こういうキャラ付けじゃないと均衡がとれないのかもしれない……。
こんな内容というのは……。悲しい。何だこの悲しいお話は!表紙の萌え絵に騙されてはいけません。これは「鬱系小説」といっても過言ではないでしょう。転落して、転落して……。話が進むにつれて状況は益々悪化して……心が居た堪れなかった。シルクのハンカチを望んでいたのにいじめっ子にぼっこぼこのケチョンケチョンにされた挙句、ぼろ雑巾を与えられて「ありがとうございます」と喜んでしまうようなものだ。
ちょっと書評めいたことを言わせてもらうなら、この展開は素晴らしいんだと思う。もうゲームオーバーだろ……と思わせる展開は見事。実際2章ぐらいを読んだ時点では希望の光はどこにも見当たらないし、好転する材料は一切ない。それでいて、物語を収束させるのはすごい。

ただ、一つ言わせてもらいたいのは挿絵がひどいということ。筆者が望んだのか編集部が選んだのかはわからないが、明らかにこの点はマイナスだと思う。ない方がいいかもしれない。

とにかく。設定も然ることながら内容で読ませてくれる作品でした。他人に大声でおすすめできる内容ではありませんので、こっそりおすすめします。好き嫌いがはっきり分かれる話かもしれませんが、個人的にはこういうお話も大好きなんで満足でした。次回作にも期待したいと思います。第6回SD小説新人賞大賞受賞作。