薔薇のマリア〈5〉


薔薇のマリア 5.SEASIDE BLOODEDGE (角川スニーカー文庫)

薔薇のマリア 5.SEASIDE BLOODEDGE (角川スニーカー文庫)

マリアたちの舞台は、エルデンを飛び出し、ジェードリへ。
一冊の完成度として見るならこの薔薇のマリア〈5〉は小説として不合格だった。
何がダメかって、もう理解しづらい。マリアたちZOOはエルデンからジェードリに向かっているという設定で、ほとんど登場しない。そしていきなり出てきた、感情移入もできていないキャラクターたちが、死んだりピンチに陥ったりして、正直「ああ、そうなったのか。それで?」状態。一巻では、キャラの書き分けが上手にできていたが、この巻ではもうその点が特に致命的で、かつ序盤は視点も右往左往するので、新キャラたちが薄くなってしまっている。
具体的に言えば特に出来事が起きない200Pくらいまではつまらなかった。馬車でのサフィニアとか、思い返すとZOOの場面の方が面白く感じてしまうので、この小説の魅力はやはりZOOを中心に出来ているんだなあ。
後半になってやっとキャラ同士も繋がり、話も盛り上がって一応山場を迎えるんだけど、さすがにちょっと遅すぎる。延々とスケートリンクに氷を張る作業を見せられたというか、ずーっとスポンジにクリームを塗る作業というか、とにかく、肝心の主役が不在のまま、あるいは主役格の柱を打ち出すことができずに話が進んでしまったように思えました。作者の中ではこのジェードリという舞台で何をするのか決めてあるのかもしれませんが、それを読者に伝えるという点に置いてはいささか手順を間違えていたのではないでしょうか。
ということで、薔薇のマリアには珍しく不満の残る一冊でした。
どうでもいいけど、P379に誤植発見。