薔薇のマリア〈1〉


仲間っていいな。編集部解説にもありますが、月並みにそんなことを思ってしまう小説でした。
ゲーム的な剣と魔法のファンタジー世界で、この第一巻ではお宝を目指して地下洞窟に潜ります。何といってもバトルシーンが面白いかったですね。前衛が敵をなぎ倒しその間に魔導士が呪文を詠唱する。サポート役の僧侶がいて、前衛と後衛を連携するMF、リベロ的なポジションのキャラクターがいる。パーティ内の連携をフルに使った戦闘は良いですね。そして何より主人公マリアの弱いこと弱いこと(笑)雑魚敵にはなんとか勝てますが、それが2人、3人になるともう、ヤバイんです。貞操の危機になるんです。どうしようもありません。その弱さのせいでクラン内での居場所を見失ってしまいます。口喧嘩の相方カタリも同様で、他の前衛二人に比較するとやはり弱いので、自信を失っています。それでも、マリアとカタリはそれぞれの方法で、クランZOOの中での居場所を見つけ、自信を取り戻していきます。そういった集団内でおこる不安だったり、葛藤だったり居場所的なことを考えたりするのもクラン、仲間を主体に描かれているからですよね。
役割分担された戦闘がキャラ立てに一役買っていますので、登場人物が多いですがすんなり読めました。ただ、例えば灼眼のシャナ。例えば円環少女など、それら同様に完成された世界観なので、導入部は少し分かりにくいかも知れませんが、それもまた、魅力の一つ。まあ、何よりの魅力は男か女か明言しないマリアなんですがね。「僕は男だ!」とか股間が膨らむ描写があったら少し凹むと思いますが、その2秒後には新たな性癖に目覚めますからいいんですけどね。ヒヒヒ。
内容的にも一難去ってまた一難、という具合に展開していくのでどんどん読み進めてしまいました。「冗談は魚顔だけにしとけ」ってのは軽く吹きました。「仲間」と供に冒険するライトノベルが読みたいならこれは打って付けですよ。良かったです。