戦う司書と虚言者の宴


戦う司書と虚言者の宴 (スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と虚言者の宴 (スーパーダッシュ文庫)

周知の事実かもしれないが、司書シリーズでは題名あるいは章題の助詞に、その物語を象徴するようなものが飾られている。タイトルの意味も含めて読み解くのも一つの楽しみである。
7冊目となった戦う司書シリーズ最新刊。
リビアが再び登場。舞台はバントーラ図書館そして世界中を巻き込んだあの地獄のような戦いから一年後、年に一度の司書たちのパーティ(忘年会ともいう)である。
「虚言者」といわれると真っ先にあの人物が思い浮かぶが、タイトルはあくまで「宴」であってそれは一人でできるものではない。それぞれが、それぞれの思惑を胸に秘め、仮面を被ってこの宴に出席している。
どちらかといえば、石剣タイプの地味ながらも読ませるタイプのお話。過去と現在を織り成すシリーズ恒例の構成はやはり物語に深みを与えてくれます。一章を読み終えて、再び混乱と期待に胸の高まりが収まらなくなりました。戦後の一年間に様々な出来事があるにも関わらず、現在進行形の物語、司書たちの宴はとにかく静かに、平和に進む。これが良いですね。さらに、今まで敵味方関係なくボコボコ死んでいったので、誰かが死ぬんじゃないかと、1P捲る度に無駄にハラハラしていました(笑)タイトル通り嘘に翻弄されましたが、その中でもヤンクゥのどこまでも真っ直ぐな嘘は一番心に響きました。そして、嘘をつけない新楽園管理者ミンスも誠実で良いキャラしてましたね。新生・神溺教団には思わず入信したくなります(笑)オリビア対ハミュッツの結末も良かったです。
いよいよストーリーの根幹部に迫ってきました。今回は今までのまとめ、伏線の回収、そして、新たな跳躍へ向けて膝を折り曲げた感じが強いです。もちろん、膝を曲げたからといってもそこにある面白さや熱さは失っていません。とにかく、やっと着地点が想像できそうな所にまできました。


幾つかの謎を提起してこの虚言者たちの宴は、やはり静かに幕を閉じていきます。