時載りリンネ!


時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

時載りリンネ!〈1〉はじまりの本 (角川スニーカー文庫)

どうにもノスタルジーが漂う作品が好きらしく、しかもそれがわくわくするような少年の冒険小説なら尚更だ。そしてこの小説はまさにそういう小説だった。
僕はたいていあとがきから読む癖があるんだけど、このあとがきを読んで久々に「あ、求めてたものだ」と思った。だって「わくわくするような冒険がしてみたい!」という書き出しから始まって、かつ作者の思い浮かべている情景がまさに僕の求めていたものだったから。

「わくわくする大冒険がしてみたいな。物語みたいな。悪党に狙われて困っている女の子を颯爽と救うような話が理想ね。日常の中のふとしたできごとから幕を開けて、しだいに謎が膨らんでいく不思議な展開。中盤はミステリーあり、活劇あり、友情ありの総天然色の大冒険よ。お待ちかねのクライマックスには悪党をやっつけて、もちろん最後は綺麗な大団円を迎えるの。すべてが終わったあと、前よりも少しだけ世界が輝いて見えたら素敵よね!」

この最初の場面でのリンネの言葉。これが、そのまま僕が物語に求めているものと言える。わくわくするような大冒険をする「物語」が読みたい。「物語」がすべて終わったあと、前よりも少しだけ世界が輝いて見えたらいいな、と。これは本来、小学生ぐらいの人が読むべきなのかもしれないけれど、このような綺麗で爽やかな、原風景を喚起させるような物語を僕はいまだに欲している。
「時載り」の設定は今の時代に即したものかもしれないけれど面白く読めたし、8章の幻想的な光景も素晴らしく「夏休み!ドキドキわくわく大冒険!」を良く表現していた思う。敷石。
第11回スニーカー大賞<奨励賞>受賞作。