ユーフォリ・テクニカ―王立技術院物語


お腹いっぱいになれる本だった。


産業革命後のヨーロッパを背景に、架空の技術「水気」がテーマになっている科学ファンタジー
――19世紀末叡理国、ネルは東洋人として初めて王立技術院に赴任してきた。
しかし、研究員に応募してきたのは情熱はあるが常識は蹴倒す破天荒王女エルフェールだった――


なかなかに詰め込んであった。
普通の2,3巻分くらいあったんじゃないかって思う。
その代わり、小さめの起伏が幾つか続くけどそこまで大きな山はなかった。
それでも読後の満足感は良い。


いやーエルフェールの破天荒ぶりにはこっちまで元気になってしまう。
怒ったと思ったらいつの間にか泣いていて、そのすぐ後には笑ってる。

思い立ったら吉日よろしく、行動力がすごい。
怒るのも全力。
謝る時なんか、床に額をぶつけ過ぎて血が出るまで頭を下げる。

昨今少なくなってきた古典的な熱血、実直主人公だ。
そこに好感が持てたんだと思う。


ただ、付き合えと言われてもちょっと困るかな。ってぐらい元気な女の子。


ネルとエルフェールの師弟関係が羨ましい。
尊敬なのか、恋心なのか、それとも独占欲なのか。
決してラブコメではない。それなのにグランゼや他の女の子たちに嫉妬しちゃうエルは可愛かった。


あとがきの言葉を借りると、この作品はファンタジー(科学)のプロジェクトXだ。
頑張って、頑張って、困難に直面して挫折しそうになって、それでも頑張って、目標に突き進む。


エルのパワー。そして作品全体にある、前に進もうとするパワー。


久しぶりに真っ直ぐで良い作品だった。