輝石の花


輝石の花 (富士見ファンタジア文庫)

輝石の花 (富士見ファンタジア文庫)

大賞レベルの新人デビュー作。今更ながら読みました。

《輝石使い》を目指す少女ベルネージュ。田舎の村に暮らす彼女は、幼馴染みの少年カッサや村の人たちと穏やかな日々を過ごしていた。だがその平和な村を《黙》が突如襲う。《黙》――それはあらゆる「命のリズム」を奪う存在。そしてこの襲撃により、村は滅亡した……。さらに半年後、孤児院に身を寄せていたベルネージュとカッサを更なる不幸が襲う。カッサの体に「黙化」の兆候が現れたのだ。このままではカッサは「黙」になってしまう……。
「二人なら大丈夫。大丈夫だよ……」
ありとあらゆる病を治すという雪月花の伝説にすべてを託し、二人は旅に出る。最後の絆を失わないために――。読む者の心に切なくさわやかな風をおこす、感動の長編ファンタジー

第18回ファンタジア長編小説大賞、努力賞受賞作。何だかんだで一年も積んでしまいました(笑)でも今では後悔しています。面白かった。一巻完結で、ジュブナイルファンタジーとしてすごく良くできていました。輝石、黙(しじま)、歌い手、五頭の竜など設定がしっかりしていたし、もっと評価されてもいい作品だと思います。輝石という能力はそこを掘り下げて能力バトルも作れそう。構成はシンプルですが、思春期前後の少年少女における純粋な想いがストレートに伝わってきました。主人公が黙化してしまうという、こっちがハラハラしてしまうような作りはいいですね。ラストも自分好みです。設定が豊富で説明しきれてない点があるし、まあデビュー作ということで色々難癖付けようと思えば付けることもできますが、読み終わった今はあらすじ通り、心にさわやかな風をおこしてくれます。派手さはない地味でシンプルな作品だけど、ライトノベルで真っ当なファンタジーが読みたい人、さわやかな読書をしたい人には向いています。
しかし、最近こんな感じのファンタジーばっか読んでるなあ。なんか自分の青春時代に恨みでもあるんだろうか……。あと、編集部の解説は「泣ける」を連呼していて少しイライラしました。よっし、作者の新刊も読んでみるか!と、思ったが情報なし。……ち、遅筆なだけだからねっ!
とにかく、輝石で奇跡を紡ぎだす素敵なお話を、貴方も見つけてみませんか?(ARIA風)