ピーターパン・エンドロール

ピーターパン・エンドロール

ピーターパン・エンドロール


実は日日日初体験。

4月。新学期の教室のなかで、御前江真央はその心と身体に奇妙な違和感をおぼえていた。自分がここにいる意味がわからない。クラスメイトの顔も思いだせない。なぜだろうか、お腹の奥には「何か」がいるような感覚までする。すっかり困惑する真央だったが、ピーターパンのような不思議な少女との出会いをきっかけに、一緒にその違和感の正体を探りはじめる……。すべての「少年少女」に贈る、大人になれない少女と大人になりたくない少女の、夢と冒険、妄想と現実の物語。


変化球タイプの青春小説。一人称で書かれているのだが、主人公がまたちょっと不思議な方なので、視点が特殊だった。だから、文体も独特。ファンタジーみたいなものを期待している方は注意ですね。ファンタジーなんか皆無です。むしろ「現実に帰れ!仕事しろ!」と言われそうです。
筆者が意識的に思春期特有の考え(所謂中二病)を体現しようとしてると思いました。特に前半部。内容は虚構、現実というSFでよくみるアレを主原料にしています。虚構と現実、大人と子供、真実と嘘。ピーターパンの話を作品内で引用しつつピーターパンの持つ二面性を効果的に利用しています。さりげなくミステリ成分も含まれているので最後は二転三転してグラっとするように決めてきます。現実を虚構世界で否定する人、虚構で現実を生きる人。虚構でしか救われない人。現実が虚構の一部だと思う人。どんなに逃げたところで、「すべてのウェンディは大人になってしまう」んです。非情です。
ところでりんご(自称)は大人なんでしょうか。そんなことはないと思います。じゃあ仕事を始めたら大人でしょうか。微妙なところですね。私もまだまだウェンディです。
どうでもいいんですが、うろ覚えになってしまったピーターパンの話が読みたくなりますね。
すべての「少年少女*1」贈られた作品でした。ちなみにこの作品は日日日のデビュー作「ちーちゃんは悠久の向こう」にリンクしてるらしいです。

*1:あなたが自身を少年だと思うならあなたは少年ですぜ!