冬の巨人

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

冬の巨人 (徳間デュアル文庫)

文学史上、日本の倒錯した自然主義田山花袋抜きでは語れない。
同様に、ライトノベル史を語る上で欠かせない作家、古橋秀之
その奇才・古橋が描く正統派異世界ファンタジー

ミールから読み解く

強烈だった。
極寒の地を歩く巨人ミールの背を舞台に青年の成長を描いた物語。
というのが表面的なお話。裏側では「地球環境の崩壊直前」という含みを持たせた、痛切な話になっている、と思った。
あくまで個人的な見方ですよ?まあ地球と比較するのはあれですが、本作では一つの都市崩壊が描かれています。


ミールとは即ち世界そのものであり、彼らにとって星なのである。
我々が宇宙や地球の存在を意識的には感じないのと同様に、ミールに住む人々もミールそのものを感じることはない。
そしてオーリャはミールを認識した。象徴するようにオーリャはミールの地鳴りを自覚する。そして、同時にミールが瀕死であることも。


人類は様々な問題を抱えている。人口や食糧問題。環境や格差問題。
我々は、この世界、この地球が当たり前である。当たり前だからこそ、この地球を無限と考え、無制限に傷つけることもできる。それこそ瀕死であることを知ってか知らずか、崩壊するまで傷つけてしまうかもしれない。


例えば、一般に技術やコスト面から考えて石油はあと約50年で枯渇すると言われている。現在石油の価格は上がっている。これは一過性の上昇ではなく、これからも恒常的に、何倍の価格にも上昇するだろう。そして、枯渇する事態がいずれは訪れる。恐らく作中にある内市民と外市民の様な差が出てくるかもしれない。現代のいわゆる格差社会が恐ろしいまでに発展する状態になるかもしれない。そして、人類はどんどん荒廃の道を辿って行くのかもしれない。

主な原因と考えられている二酸化炭素の排出量を減らそうとも、地球温暖化は止まらない。逆立ちしたって技術の進歩が地球環境を破壊する速度に追いつくとは思えない。
そう、地球はいつの日か住めない星になる。
それは石油枯渇後かもしれないし、何百年後かもしれない。

そのとき、我々はどうすればいいのだろうか。冬の巨人ではその問題に、お話ならではやり方で一定の方向性を見出しているが、我々はどうすればいいのだろうか。



なーんて小難しく書いてみました。
でもやっぱりダメですね。意味不明です。疲れた…。「かもしれない」ばっかだ(笑)


とりあえず、映像化された冬の巨人を見てみたい。
本書は一巻にまとめてあるのでやや駆け足だけど、逆に2時間映画なら十分に表現出来ると思う。


初めてミールを認識した瞬間。
天球(ニエーバ)にある薔薇園に足を踏み入れた場面。
雲の上に達した瞬間。
そして、ラストシーン。


うーん。見たい。そしてこれ、スタジオジブリに似合いすぎるぞ。


とにかくスケールの大きい、どこか神秘的、神話的な異世界ファンタジーだった。それをうまくライトノベルに仕上げてる。色々書いてますが、面白かったんです。その一言で十分です。
しかし、同時に超妹大戦シスマゲドンなんてタイトルの小説書く作家なんて、信じられないやら幅が広いやら。


本書が吾郎ではなく駿の手に触れることを切に願いましょう。

超妹大戦シスマゲドン (1) (ファミ通文庫)

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