沙漠の国の物語―楽園の種子

沙漠の国の物語―楽園の種子 (ルルル文庫) (初回限定特装版)

沙漠の国の物語―楽園の種子 (ルルル文庫) (初回限定特装版)


小学館ライトノベル大賞ルルル文庫部門」大賞受賞作。

沙漠の聖地カヴルで天真爛漫に育った男装の少女ラビサは、水をもたらす奇跡の樹「シムシム」の種子を預けるに相応しい町を、広大な沙漠の中から探す使者に選ばれた。しかし旅立の直前、盗賊団にラビサの町が襲撃され彼女に危険が。そこで突如現れた謎の少年ジゼットに助けられ二人の運命の旅が始まる!

上のリンクは初回限定特装版で、20分のドラマCD付きという豪華っぷり。りんご(自称)は何も知らずに初回版を買ってしまいました。ドラマCDについては特筆すべきことはありません。あらすじに近いので先に聞いてもいいかもしれません。私は読後にさらっと聞きました。
うん、面白かった。世界観、キャラクター、ストーリー、すべて一定の水準で、上手くまとまっていた。個人的には一巻で完結しているのも良かった。男装の少女ってのが高ポイント。最初、主人公と行動を共にするジゼットが少女だと気付かないで少年だと思ってる。うん、いい。はい、これも私的なポイントでした。すみません。
世界観が一番良かったと思う。沙漠の世界が良い具合に表現されてる。水は大切ですよ。これは「水と安全はタダ」だと思っている日本人に対する警告なんです。*1「砂目だ」っていうセリフが素敵だった。砂漠では泣く事を良しとしないので、泣く時は「砂目になった」と宣言する。かっこいい。オチにこの言葉を選んでも良かったぐらいお気に入り。
でも大賞だけに上手にまとまり過ぎていたかも。予定調和というか、定型文の通りに進んだって感じは少しする。あと、もう少しだけ部分部分に肉付けしても良かったと思う。ちょっとだけ薄く感じた部分もあった。だから、作家志望の人が「うわぁ、こりゃ勝てねえ」とはならずに、「おれでもいけるかも…」と錯覚してしまうタイプの作品と言ってもいいかもしれません。*2
とにかく盗賊団が街を襲う辺りからは面白くなってきますよ。良作ファンタジーでした。


ルルル文庫はガガガと違って正統派で勝負の予感です。
しかし少年向けレーベルでもこういうしっかりしたファンタジーが増えないかなあ。



あと一応。下は通常版。表紙も違うようです。

沙漠の国の物語―楽園の種子 (ルルル文庫)

沙漠の国の物語―楽園の種子 (ルルル文庫)

*1:嘘です。ごめんなさい。

*2:もちろん錯覚であって普通に書けません。